生徒と心でつながる教師のやりがいと、働き方改革
担任業務、部活動指導、分掌や委員会、保護者対応、ICT活用準備、地域との連携、研修会。
授業準備以外にも数多くある学校の先生の仕事のせいで、授業準備も終わっていないのに定時を過ぎ、まだまだ仕事は山積み、なんて日は珍しくないでしょう。
でも、そんな毎日に、心をぎゅっと鷲掴みにされるようで同時に優しく抱きしめられるような、そんな温かな幸せを感じる瞬間があります。
生徒と、心でつながった瞬間です。
それが起こるのは、
一生懸命生徒の話に耳を傾け、決して否定せずに受容し、学校のためでも親のためでもないその子にとっての一番いい方法を考え続けた後かもしれませんし、
自分に反抗してくる生徒に心折れそうになりつつも、自分のことよりその生徒の幸せを願い、自分を奮い立たせてまた立ち向かった後かもしれませんし、
1対40としての担任ではなく、1対1×40という考えでひとりひとりを愛し、同時に団体や仲間としてのクラスをも厳しく優しく愛しぬいた後かもしれません。
そんな努力の末に心でつながることができたら、私たち教師はその証拠として、素晴らしい瞬間を感じることができます。
普段から様々な場面から生徒の表情を見て、その子のことを理解して、ひとりの人間としてしっかり接してきたからこそ感じる、その子の心の扉が開く瞬間。
それまで、「だれも分かってくれない」「どうせ大人は良い子が好き」などという思いで閉ざされていたその子の心の氷が解け、本来のあるべき自分としてそこに存在していたその子自身が、「やっと見つけてくれた」と泣いて喜ぶように甘えを見せ始める瞬間。
それは、大人や環境がその子に強いてきた「重荷」を、やっとおろしてあげたということなのかもしれません。
たったひとりのかけがえのない人間として、そして子供として生きていいんだと、本当の意味でその生徒に伝えられた瞬間なのかもしれません。
その瞬間の生徒の目は生き生きと輝き、それまで自分に向けられていた視線の投げ方も変わっていることにきっと気づくでしょう。
そんな瞬間に立ち会えた時、私たち教師は言いようのない達成感と感動で心が溢れ、体の中にその子の想いが流れ込んでくるような感覚を味わいます。
まるで、ふたりで話しているこの場まで含めて一体化できたような一体感。
まさに教師冥利に尽きる、自分の努力が報われた、では済まないような感動です。一生懸命さが生徒に伝わり、それ以上のものを生徒は返してくれた。そう感じられ、きっとやりがいにつながることでしょう。
私も昔の教員人生の中で、そう感じたことが数えきれないほどありました。
しかしそれは、とても時間と労力を必要とするものです。
目の前の生徒と接することに、前例はありません。
全身全霊をかけて生徒理解に励むしかなく、その方法は多種多様で生徒の数だけあるのです。
冒頭のように、教材研究の時間すらままならない学校の先生が、果たしてどれだけ生徒理解や生徒に思いを巡らせることのために時間を使えるでしょう。
目の前の生徒に一生懸命になるために教師に与えられた時間は今、十分にあるのでしょうか。
答えはきっと「いいえ」です。
今日あった出来事について生徒と話したいのに、放課後時間を割かなければいけない会議。研修会。本日までと言われた事務処理や会計処理。
そんなものに追われた先生が、果たして寛大な心と受容的な態度で生徒の話を聞けるでしょうか。
それはあまりに酷というものです。
前述のとおり、生徒のために時間と労力をかけ、心でつながる体験は、教員を辞めた今でも忘れられない出来事です。
生徒のために一生懸命になる。それこそが教師の本分なのですから。
勉強だけを教える場ではない学校としての、大切な役割なのですから。
だから、学校の先生に、そのための時間と労力をかけさせてあげてください。
小手先の働き方改革ではなく、大幅な仕事量の削減で、もっともっと、生徒のことをただただ考えるだけの時間を、学校の先生に与えてください。
あの子の顔見た限り、今日元気なかったな。返事もいつもより小さかった。放課後、ちょっと話しかけてみよう。
授業で最近あの子大活躍だな。良い意見をたくさん言ってくれる。ちょっと時間をかけて話を聞いて、どんな勉強してるか聞いてみよう。そして、学級通信で紹介しよう。
そんな風に生徒への想いにふけり、それを実行にうつせるだけの時間を、余裕を、学校の先生に与えてください。
それが、必ず、子供のためになります。
必ず、この国の子供の豊かな心を育てます。
生徒と心でつながる、感動的瞬間。私はすべての先生に味わってほしい。
だからそのために、学校の先生に、そこへ向かえるだけの環境を整えたい。
コロナで人と人との関わりがより一層軽薄になりがちな現代だからこそ、生徒の豊かなこころ醸成のために先生が一生懸命に理解に努める。
たったそれだけの、当たり前に思えることが、今、当たり前にできない。
働き方改革において、思い切った対策がなされていないからです。
どうか、当たり前を、当たり前に。
人間らしい余裕のある働き方をするからこそ、人間らしい教育ができる。
その当たり前を、どうか、当たり前に。
私の一番の願いです。
忙しい学校の先生方、いま私は学校の先生向けのカウンセリングを猛勉強中です。
頑張るあなたのお役に、ぜひ立たせてください。
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もし、誰かに話を聞いてもらいたい、寄り添ってもらいたい、褒めて認めて欲しい、そんな時にはぜひご利用ください。
学校の先生のお役に立つこと、少しでも負担を減らすこと、気持ちを楽にすること、それを目指して私も頑張ります。